「住友林業」は高配当株投資として魅力があるか調べてみた!
住友林業は木に強みを持ち、木造注文住宅のトップブランドであるとともに、国内の木材・建材業界No.1商社です。
そんな住友林業ですが、積水ハウスや大和ハウスのように、高配当株投資の候補として紹介されることが少ないのが現状です。
「住友林業への投資を検討しているけど、魅力があるか知りたい」
そんな方のために、建築業界で14年間以上勤務し、高配当株投資歴も3年以上の私が、住友林業が高配当株としての魅力があるのか、確認すべきポイントを、初心者にもわかりやすく解説します。
この記事を読めば、住友林業について理解を深め、投資すべきか判断できるようになります。
・住友林業について理解が深まる
・投資すべきが判断するためのポイントがわかる
投資先として気になるところ
①売上高
売上高はコロナ禍では減少したものの、その後は右肩上がりで増加しており、2023年12月期には1兆7,331億円となり過去最高を更新しました。(なお積水ハウスは3兆1,072億円、大和ハウス工業は4兆9,081億円)
営業利益と計上利益は増減はあるものの長期的には右肩上がりで安定しており、今後も業績成長が期待できます。
2024年12月期には、営業利益率と経常利益率の10%超えに期待したい。
②成長の見通し
住友林業の売上高の半数を占めているのは海外住宅・建築・不動産事業となっています。経常利益では全体の8割以上を占めています。特に業績に最も大きな影響を与えているのは米国住宅市場です。
日本では少子高齢化等により住宅市場が縮小傾向にあります。しかし米国は人口が増加しており、かつ30代半ばの人口が多い状況です。この年代が住宅の購買層となり、今後、金利が落ち着いてくれば需要増が期待でき、将来的には強いマーケットが続くことが見込まれます。
経常利益はほぼ海外から得ているんだ。
③株主還元
住友林業は、株主への利益還元を最重要課題の一つと認識し、これを継続的かつ安定的に実施することを基本方針としています。
配当金は、右肩上がりで増加しています。
配当性向はほぼ横ばい(30%以下)で推移し、配当余力は十分にありますが、もう少し株主還元してもらいところです。※配当性向については、後ほど詳細を説明します。
2020年は決算期の変更のため配当金が減少しているけど、それ以外は減配はないよ。
④配当優待券
現在は実施していません。
住友林業の会社について
概要
住友林業は山林事業、木材建材製造・流通事業、国内外での住宅事業、バイオマス発電事業など多くの事業に取り組んでいます。
・本社所在地 東京都千代田区大手町一丁目3番2号(経団連会館)
・設立 1948年2月20日
・従業員数 24,815名 (グループ全体 2023年12月末時点)
・売上高 1兆7,332億円 (2023年12月期実績)
木材建材事業
国内外から良質な木材・建材を仕入・販売する流通事業、国内外における建材製造事業、海外での流通事業など。
住宅事業
日本の戸建注文住宅事業、戸建分譲住宅事業、賃貸住宅事業、リフォーム事業、不動産管理・仲介業、外構・造園事業など。
建築・不動産事業
米国、豪州、東南アジアなど環太平洋地域を中心とした事業エリアにおける戸建住宅の建築・販売事業、集合住宅や商業複合施設の開発事業、中大規模木造建築事業など。
資源環境事業
国内の社有林事業、ニュージーランドおよび東南アジアにおける植林事業、森林アセットマネジメント事業、再生可能エネルギー分野の発電事業など。
海外事業を展開している「建築・不動産事業」が売上高の半分を占めているよ。
販売戸数
販売戸数について、日本はやや右肩下がりで減少しているのに対し、米国と豪州は右肩上がりで増加しています。
日本の2023年12月期の合計(戸建注文、賃貸、分譲)は9,295戸。
米国(アメリカ)の2023年12月期の販売戸数は10,221戸。
豪州(オーストラリア)の2023年12月期の販売戸数は3,402戸。
2023年の販売戸数は、日本より米国が多いんだね!
特徴
日本の住宅事業
住宅事業では、1975年に戸建注文住宅事業に参入して以来、高品質な住宅を提供しています。
特徴は木質梁勝ちラーメン構造の独自のBF(ビッグフレーム)構法を採用した住宅を中心に建築しています。
海外の建築・不動産事業
2003年に米国での住宅事業を開始して以来、有望な成長マーケットへの新規参入を積極的に進めています。現在は豪州・アジア地域等でも住宅・建築・不動産事業を展開しています。
ウッドサイクル
住友林業グループは森林経営から流通・木造建築・バイオマス発電まで「木」を軸に事業活動を展開しています。
森林経営では、国内で総面積約4.8万ヘクタールの社有林を、海外で管理保有面積約23.1万ヘクタールの植林地を管理しています。
流通では、適正に管理された森林から良質な木材を安定的に調達し、取扱高国内NO.1の木材・建材商社として、木材・建材の製造から流通まで幅広く事業展開しています。
また木造建物を建築することにより、長期間にわたり炭素を固定することで脱炭素社会へ貢献しています。
脱炭素社会の実現に向け、貢献していることは魅力的だね。
トップメッセージ
「森林」「木材」「建築」を3つの柱として、森林経営から木材建材の製造・流通、戸建住宅や中大規模木造建築の請負、不動産開発、そして木質バイオマス発電まで、「ウッドサイクル」を回しながら、森林のCO2吸収量を増やし、炭素を固定する機能がある木材製品(HWP:Harvested Wood Products)の需要を喚起し、良質な木造建築を普及することで長期間にわたる炭素固定を実現します。
「建築」分野では、国内外での年間住宅販売戸数を2021年の2.7万戸から2030年には5万戸まで増やす計画です。
業績面においては、2030年に経常利益2,500億円の達成を目指しています。
過去の業績(高配当株投資として)
高配当株投資先として検討する際、過去の業績等を把握することは重要です。
業績チェックにあたり、特に重要と思われる以下の6つの項目をまとめました。
項目 | 評価 (⭕️良い △普通 ✖️悪い) |
売上高 | ⭕️ |
EPS (1株あたりの利益) | ⭕️ |
営業利益率 | △ |
自己資本比率 (企業の安全性を表す指標) | △ |
1株あたりの配当金 | ⭕️ |
配当性向 | △ |
高配当株としては、もう少し⭕️を増やしてほしい。
現時点では、自分は投資しないかな。
売上高:⭕️
売上高とは、企業が提供する商品やサービスで1年間にいくら稼いだかを表す売上金額の総額のことです。
・右肩上がりになっているか
・増減が激しすぎないか
出所:IR BANK
多少下がっている時期もあるけど、全体的には右肩上がりになってるね。
EPS:⭕️
EPSとは、1年間にその会社がいくら稼いでいるかを、1株あたりの利益で表したものです。
株式投資において最も重要な指標で、伝説の投資家ウォーレン・バフェット氏も重要視しています。
・右肩上がりになっているか
出所:IR BANK
全体的には右肩上がりになっているね。
営業利益率:△
営業利益率とは、売上のうち営業利益の割合のことです。営業利益が高いほど儲かるビジネスをやっている収益性の高い企業です。
・10%以上なら優秀
・5%以下なら検討の余地なし
出所:IR BANK
2020年以降は5%以上をキープしているよ。
自己資本比率:△
自己資本比率とは、企業の安全性を表す指標です。自己資本比率が高ければ高いほど潰れにくい会社です。
例えば手元に100万円がある場合、考え方は以下のとおりです。
100万円全額を自社で用意できた場合・・・自己資本比率100%
40万円を自社で用意、60万円を借金で用意した場合・・・自己資本比率40%
・40%以上は欲しい
・60%を超えると安心
出所:IR BANK
今後も40%以上をキープしてほしい。
1株あたりの配当金:⭕️
配当金とは、保有株式の数に応じて株主に分配される現金のことです。
・配当金の安定性(減配や無配がないか)
・配当金の成長性(増配)
出所:IR BANK
全体的に右肩上がりになっているね。
配当性向:△
配当性向とは、利益のうち何%を株主にキャッシュバックするかを示す指標です。
企業が無理して配当金を出していないかチェックすることができます。
・30〜50%は健全
・70%以上は要警戒
出所:IR BANK
ほぼ30%以下だから、もう少し株主にキャッシュバックしてほしい。
Q:配当性向についての方針はありますか。
A:配当については、継続的・安定的配当を基本に、業績等を総合的に勘案した上での利益還元を行うことを方針としています。
現在と今後(高配当株投資として)
配当利回りと株価の割安判断
配当利回りとは、1年間の配当によるリターンが、投資額の何%になるかを表したものです。
配当利回りは4.0%以上は欲しい
現在の配当利回りは、約2.2%(2024年5月17日現在)です。
現在の配当利回りは低い。
株価が割安かを把握することも重要だから、ミックス係数も見てみよう。
ミックス係数
現在の株価が割安か判断する指標のひとつにミックス係数があります。
伝説の投資家ウォーレン・バフェットの師匠として有名なベンジャミン・グレアムが定量分析に活用できるよう、以下の考え方を紹介しています。
ミックス係数「PER(株価収益率)×PBR(株価純資産倍率)」
この係数が22.5を下回った時に割安と判断しています。
さらにいうと、PERが15倍、PBRが1.5倍程度が目安です。
ミックス係数は18.32(PER:11.45、PBR:1.6)で、株価は比較的割安かな。(2024年5月17日現在)
株主への還元の考え方
住友林業は、株主への利益還元を最重要課題の一つと認識し、これを継続的かつ安定的に実施することを基本方針としています。
内部留保金を長期的な企業価値の向上に寄与する効果的な投資や研究開発活動に有効に活用することで、自己資本利益率(ROE)の向上と自己資本の充実を図るとともに、経営基盤、財務状況及びキャッシュ・フロー等のバランスを総合的に勘案しつつ、利益の状況に応じた適正な水準での利益還元を行っていくとしています。
未来の展望
日本の住宅事業は、少子高齢化により住宅マーケットは縮小していますが、住友林業の日本のマーケットシェアは3%程度となっています。シェア拡大するためには、脱炭素の流れを踏まえたZEH(ゼロエネルギーハウス)の普及にいち早く対応できる大手企業の強みを活かしていくことが重要となります。
海外の住宅事業は、米国をメインに成長が期待できます。住友林業は日本の他社に比べ、米国進出を早くから進めており、協力会社も長い時間かけて選定してきました。米国は、人口ピラミッドとして30代半ばがボリュームゾーンとしており、住宅の購買層として見込むことができ、金利が落ち着いてくれば、さらなる需要増が期待できるため、将来的に強いマーケットが続くと考えられます。
また進出エリアとして、米国のサンベルトと呼ばれる、企業が多く進出し人口増が見込める地域に展開していることも強みです。
まとめ
住友林業は木に強みを持ち、木造注文住宅のトップブランドであるとともに、国内の木材・建材業界No.1商社です。また海外事業では売上の半数を占めており、米国住宅市場を中心に需要増が見込めるため、今後の成長が期待できます。
さらに住友林業グループは、脱炭素社会に向けた社会課題の解決に寄与できる経営資源(森林経営、木材加工・流通、木造建築、バイオマス発電)があります。このウッドサイクルを展開することで、日本が目標に掲げている、2050年にCO₂の排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現に大きく貢献できることも魅力です。
高配当株投資としては、経営成績に応じて株主の利益還元を継続的に行うことを基本方針としていますが、現時点では配当利回りは高くないため、あまり魅力は感じられません。しかし脱炭素事業が国の施策と一致していることや海外事業での成長が充分見込めることから、今後の動向を注視したいと思っています。
最後に、今後の住宅業界は住宅市場の低迷や金利上昇など、リスク要因が存在します。もし投資を検討する際は、これらのリスクを十分に理解した上で、慎重に判断することが重要です。
免責事項
本記事は情報提供のみを目的としており、投資を推奨するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。